前立腺全摘除術後放射線療法、ADTなしvs.短期ADT/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/05/30

 

 前立腺全摘除術後の前立腺床に対する放射線療法後に転移がみられることはまれであるが、放射線療法に6ヵ月のアンドロゲン除去療法(ADT)を追加しても、ADTを行わない場合と比較して無転移生存期間(MFS)は改善しないことが示された。英国・The Institute of Cancer ResearchのChris C. Parker氏らRADICALS investigatorsが、カナダ、デンマーク、アイルランド、英国の121施設で実施された無作為化非盲検試験「RADICALS-HD試験」の結果を報告した。これまで、中間および高リスクの限局性前立腺がんに対しては、放射線療法とともに術後補助療法として短期間のADTを行うとMFSが改善することが示されていたが、前立腺全摘除術後の放射線療法とADT併用の有用性は不明であった。Lancet誌オンライン版2024年5月16日号掲載の報告。

RT単独とRT+ADT6ヵ月間でMFSを比較

 RADICALS-HD試験は、前立腺がんに対する術後放射線療法と併用するADTの有効性を検証する国際第III相ランダム化比較試験である。

 研究グループは、前立腺全摘除術後の放射線療法の適応があり、前立腺特異抗原(PSA)が5ng/mL未満で転移病変がなく書面による同意が得られた患者を、放射線療法(RT)単独群、RT+6ヵ月間のADT(短期ADT)併用群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。層別因子は、グリソンスコア、断端陽性、放射線療法の時期、予定された放射線療法のスケジュール、予定されたADTの種類であった。

 ADTは、無作為化後2ヵ月以内に開始し、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アナログを、通常は月1回皮下投与が推奨された。加えて、GnRHアナログ初回投与の1週間前から抗アンドロゲン薬を3週間投与した。カナダ以外では、ビカルタミド単剤150mg連日経口投与、またはデガレリクス月1回皮下投与も許容された。

 主要評価項目はMFSで、前立腺がんの遠隔転移またはあらゆる原因による死亡と定義し、無作為化の層別因子による層別log-rank検定により群間比較を行った(ITT解析)。

 本試験は当初、RT単独群vs.短期ADT併用群vs.24ヵ月のADTを併用する長期ADT併用群の3群割り付け(1対1対1)、または、RT単独群vs.短期ADT併用群(1対1)と短期ADT併用群vs.長期ADT併用群(1対1)の2通りの2群割り付けのいずれかを選択するようになっていた。しかし、3群割り付けを選択した患者は少数であったことから、途中で2群比較の2試験として実施された(短期ADT併用群vs.長期ADT併用群の結果は別途報告)。最終的に、10年MFS率が80%から86%に増加(ハザード比[HR]:0.67)することに関する試験の検出力は80%(両側α値5%)であった。

追跡期間中央値9.0年においてMFSに有意差なし

 2007年11月22日~2015年6月29日に、計1,480例(年齢中央値66歳、四分位範囲[IQR]:61~69歳)がRT単独群(737例)または短期ADT併用群(743例)に割り付けられた。1,480例のうち、330例は当初の3群割り付けで無作為化された症例であった(3群割り付けでの長期ADT併用群の症例は解析から除外)。追跡調査は2021年12月31日に終了した。

 追跡期間中央値9.0年(IQR:7.1~10.1)において、MFSイベントは計268例報告された(RT単独群142例、短期ADT併用群126例)。HRは0.886(95%信頼区間[CI]:0.688~1.140、p=0.35)であり、短期ADT併用によるMFSの改善は認められなかった。

 10年MFS率は、RT単独群79.2%(95%CI:75.4~82.5)、短期ADT併用群80.4%(76.6~83.6)であった。

 Grade3以上の有害事象の発現率は、RT単独群17%(121/737例)、短期ADT併用群14%(100/743例)であり、治療関連死は報告されなかった。

(ケアネット)